肺気胸闘病記 (2004年2月)





 本編は、駅で倒れ、救急車で運ばれ、脱気→癒着→鏡腔鏡手術→合併症・・と、苦難の道を辿った闘病日記です。



04/01/13頃発病(してたはず)
  まず、「自然気胸」っていう病気について、簡単に。肺に穴が開いてどんどん縮んでいってしまう病気です。クセになる病気で、なる人はとことんなります。特に原因とかが無いのがつらい病気です・・。(「○○が原因」って言われりゃそれ止めれば済むんですけどね)

で、この私。見事に「気胸体質」らしく、今回で5度目くらいかな?毎回入院して、右肺は開胸手術までしてるんです。この気胸って病気、だいたいいつもそうなんですけど「今開いた!」ってのは感じないんですよね。いつの間にか「あれ?なんかおかしいぞ?」と。
でもって、気付いたとしてすぐに病院に行くかというと、これが正直行きたくない。

 理由1:ほぼ間違い無く即入院。しかも2週間〜3週間の期間を覚悟しなければならない。
 理由2:そこそこ痛い治療が待っている。
 理由3:極まれに「自然治癒」がありえるらしい。

仕事だってあるし、ワインも飲めなくなるし、人としてですね、「自然治癒」を期待しない方がおかしいと思うのですよ。でもって丸2日我慢した後、結局病院へ・・。

しかし!そこで嬉しい診断(つーか結果的には誤診)。「問題ありません。気胸じゃありません。」って。内心「おかしいな・・」と疑問はありましたが(開いてるのわかるんですよ、何度もやっていると)、とりあえず1週間程度の静養の後職場復帰しました。



04/01/29駅で倒れたり
  で、職場復帰後わずか3日。出勤途中の駅のホームで突然呼吸困難に。吸い込める酸素の量が一呼吸ごとに減っていくのです。

正直ね、この時は焦りました。駅員室に向かう間にもどんどんクラクラして来るし、苦しくなってくる。大げさでなく、「これは死ぬ」と思いましたよ。
そんな状態ながらなんとか自力で駅員室へ辿りつき、救急車を頼み、ソファに寝かせてもらうと少し落ち着いてきて一安心。それでもゼーゼーしながら妻と会社へ連絡。救急隊員さんに酸素マスクをもらって(←コレは効きます!)病院へ搬送。到着後速攻で左胸に穴を開けチューブをねじ込まれました・・。

ちなみにこの時の先生の言葉。「これは立派な気胸ですねー!」・・・っておい・・。



04/01/29〜2/2「脱気」じゃ治らず・・
画像
↑こんな機械が繋がります。
わきの下あたりを切ってチューブを入れるのはいわゆる「脱気」ってヤツで、気胸人にはおなじみのチューブ。胸から出たチューブの先には吸引のための機械が繋がっていて、凹んだ肺と胸壁との間にたまった空気を抜くことで無理やり肺を膨らませてやろう、という治療。で、開いた穴も塞がればOKというわけです。切って挿すわけなので当然ある程度の痛みはしますがこれはしょうがない。これはもうね、慣れっこですよ。

でもって徐々に引圧を上げながら3日くらい引いてみましたが良くならず。次の段階の治療を選択する事に。

1、このまま様子を見る。
2、胸腔鏡手術。
3、癒着療法。

「様子見」はいつになるかわからないから無しとして、「手術」と「癒着」ではどっちがいいかわからない。個人的には切らなくていい「癒着」に魅力を感じましたが今は早い完治が何より優先。先生に尋ねます。
「私が手術したくないってのは置いておいて、どれがオススメですか?」
「まず1回癒着やってみましょう。ダメだったら手術、という流れで。」
というわけで「癒着療法」を行うこととなりました。



04/02/03〜04「癒着」(運命の分かれ道)
  「癒着療法」とは、胸に挿してあるチューブから液体(抗生物質と自己血のブレンド)を流し込み、一度炎症を起こさせて治す治療法。欠点として「手術がしづらくなる」という説明もありましたが、「まあ1回くらいなら問題無いでしょう」とのことでした。

で、いざ実施。血を採られ、胸に挿しているチューブから流し込まれます。と、ここまでは良かったのですが問題はこのあと。入れた液体が患部全体にまぶさるように体の向きを右左・・さらにはブリッジ状態になったりして。あのね、傷口まあまあ痛いんですけど・・なんて思いながらもこの時の私は「これで治れば!」と必死で痛みをこらえて体の向きを変えていたのです。今思うとなんて悲しい努力をしていたのでしょう・・。結果的にはこの癒着療法に最後まで苦しめられるのですよ。想像以上に・・。



04/02/05〜09手術前日まで
画像 癒着療法後しばらく様子を見るも穴が塞がった様子はみじんも見られず。先生より
「9日まで待って塞がらなかったら10日に鏡腔鏡手術しましょう」
との提案。ついに恐れていた事が・・。
「大丈夫ですよ、以前やった開胸よりは痛くないですから」
とか言われてもねー。筋肉注射と尿管だけだって十分痛いってのに。

しかしこのまま放置してもいつ治るかわからないし、
「そんなに体に負担がかかる手術じゃないので翌日から歩けるくらいに回復しますし、オペ後1週間くらいで退院できます」
なんて言われちゃね。職場にも妻にも迷惑かけてるし、一日も早い治癒のため手術する事に決心しました。いやまあもちろん、内心では「9日までに塞がらないかなー・・」なんてささやかな期待もあったんですけどね。塞がるわけもなく(泣)。



04/02/10(その1)手術当日。ちょっとびびる。
  さあ手術当日。13:30開始予定です。正直かなりビビリ入っているんですけど平静を装ったりして。前日夜から飲み食い禁止なので喉は乾くし、朝の浣腸は苦しいし・・。ただ、一つだけ嬉しかったのは鼻からの管が無かった事。あれって入れるときかなり苦しいからね・・。

で、午後。いざ手術着に着替え、移動用ベットに横になります。肩に激痛の注射を打って・・と。ガラガラと手術室へ運搬されるあたりもまだカッコつけて平静を装ってましたが、実際手術室に入り家族の顔が見えなくなると不安でいっぱい。寒いし。機械いっぱいで怖いし。早く麻酔効かせて眠らせてくれりゃいいのにいつになっても眠らせてくれないもんだからもう・・。十分以上に恐怖を味わった頃にやっと麻酔入れてくれました・・。

ちなみに自然気胸の鏡腔鏡手術ってのは、所要時間通常1時間くらい。オペ翌日には歩けるくらいになるほどの、いわゆる体への負担の少ない手術。退院は約1週間後。もちろん私もその説明を受け、そのつもりでいたんですが・・。



04/02/10(その2)手術後
  目が覚めると予想以上の痛み。そして寒い!時間を聞くと夕方のようなのでずいぶん寝てたのかなー、なんて思いながら布団をいっぱいかけてもらい、再度ウトウト・・。家族にも帰ってもらって・・と・・。

つーか痛い!そりゃもうこの世の物とは思えないほど!前回の開胸に匹敵するくらいに痛いんですけども!痛み止めを打て今すぐ!・・ハア少し落ち着いた・・と思ったらまた痛くなってきやがる!また打て痛み止めを!・・イエス・・。
つーかまた痛いんですけど!と痛み止めを要求したところ、看護士のヤツ「2本いったのでもう打てません」などと言い出す。じゃあ次回はいつ痛み止めを使えるのかと尋ねると「明け方ですかねー」との事。今何時ですか?1時ですか。殺す気か。

という訳でですね激痛のなか何度時計を見ても3分くらいしか進んでいないという地獄を、湿ったガーゼを噛み締めながら(まだ水を飲んじゃいけないので、喉が乾くと湿らせたガーゼをくれます)耐えました・・。まだ「翌日には歩けるくらいまで回復する」という言葉を信じて・・。

ちなみに今回の手術、3時間半もかかったらしいです。1時間の予定じゃ・・?この理由は後ほど。



04/02/11〜12激痛の理由ってのが・・
  メチャクチャ痛いんですけど。オペ傷とか左肩とか。座薬とか使わざるを得ないくらい。しかもこの病院、看護婦不足みたいでコールしてもなかなか来てくれない。誰だ「体に負担がかからない手術」なんて言ったヤツは。おまえか医者コラ。だいたい手術時間3時間半ってどーゆう事だ痛いのに関係あんだろ、え?

で、聞いてみたところ「癒着療法やったところの胸壁と肺がビッシリくっついてしまっていて、剥がすのに時間がかかった。痛いのも剥がした部分のせいだろう」との事。そうなんだーへー・・って簡単には納得できないんですけども痛いのはもうどうしようもないんで耐えに耐え・・やっと12日には立てるまで回復してきました。

ちなみに妻は術後の人を見るのは始めてだったらしく「あんな凄惨とは思ってなかった」と言ってました。みなさんもね、テレビとか見て術後を「あんな爽やかな感じ」と思っていたら大間違いですからね。



04/02/13〜16癒着を剥がしたトコが!
  高熱。そろそろ熱が下がっても良いと思うんだけどね。先生いわく「肺炎になりかかっているので、動いて、深呼吸して肺を動かしてください」との事。その日から忠犬のように深呼吸を繰り返すように。

15日、突然先生が訳のわからない事を言い出しました。「胸内での出血が止まらないみたい」との事。ヘモグロビンの数値が徐々に落ちてきている(この日8.7くらい)のと、レントゲンで胸に水がたまっている事からそう判断できるんだって。どういう事か聞くと、癒着を剥がしたところから血がにじみ出ているんじゃないかとのお話。高熱も体が胸水を吸収するときの「吸収熱」であろうと判明。また癒着療法やったことの弊害か・・とへこむ。
でも「すぐ止まると思うのでこのまま様子を見ましょう。退院は1日2日延びるくらい」との事だったのでちょっと安心。

でもって16日。胸から出ているチューブに繋がっていた機械を取り外す事に。発熱や貧血はあるけども気胸自体は完全に治っているみたいでして。とはいえまだ胸にチューブは刺さったまま(先っちょに小さなパックが付く)なんですけどもね、あの大きな機械を引きずって歩く手間が消えるだけでもかなり楽ですからね。少しだけ気分が楽になりました。



04/02/17〜18ストレスがたまる
  今日は本当なら退院予定日だったワケですよ。出血さえなきゃ。しかしいつになっても退院のめどは立たないし、最悪(出血が止まらなきゃ)再手術の可能性すらある。胸水が1L以上もたまっているようで、腹にもう一本チューブ挿して抜く必要があるかもなんて話しすら。毎朝の採血も痛くてストレスだし、熱も下がらなくてだるい・・すぐ良くなるって言うからあんなに痛い思いしたのに!

とまあ、この頃かなり精神的に弱ってきてます。ぶっちゃけ転院も考えましたよ。たかだか気胸でこんな悲惨な目に合うのは医者が悪い!ってね。



04/02/19〜22胸のチューブを抜く
  やっと!胸からチューブを抜く事に。いや良かった。ホント良かった。抜くときもものすごい激痛でしたけどね、これで終わりと思って耐えましたとも。←つーか麻酔使ってくれないんですね。
しかし・・この痛みを考えるにやっぱり腹にチューブ挿すのイヤだ!絶対にイヤだ!これ以上痛い思いしたくない!毎朝の採血反対!つーか転院させろ!

でもここで吉報。20日の採血でヘモグロビンの数値が9.5まで回復。しかもレントゲンで胸水がだんだんと減ってきているらしい。先生も
「出血は止まってると思われるのでチューブ挿す必要は無いでしょう」
って・・。あぶねー・・。



04/02/23退院へ向けて
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↑リアルワインガイド。
みっちり読みました・・。
毎日毎日検温しちゃあ一喜一憂を繰り返しているうちに、徐々に熱も下がってきました。まあ午後にはちょっと上がるんですけど、以前のように39度近くまで上がることは無くなりまして。

「あとは明日の検査結果が良くって熱も上がらなければ、明後日には退院ですかね」
って先生のお言葉。・・おおっ!退院・・!いやいやここで期待しちゃいけない。この1ヶ月ほとんどの期待を裏切られてここまで来てしまったのだ。過度の期待をして裏切られるくらいなら期待なんてしない方がマシさ・・。って、完全な精神病ですね。これまで先生にも
「寝るときの向きによって吸収しづらいとか無いですか?」
「毎朝の採血はストレスなんで2日に1回に減らせません?」
「吸収熱、って事は胸水が無くならない限りは高熱が続くんじゃ?」
とか神経質な質問を繰り返し、かなり迷惑をかけてました・・。

ちなみにこの日で点滴終了。明日からは飲み薬に変更です。
さー、明日の検査結果が楽しみだ!(←結局期待してるし)



04/02/24〜25退院。それと気胸治療のアドバイスとかも
  さあ、期待と不安の今日。翌日退院の条件は以下の通りです。

 1、採血の結果が良好。
 2、レントゲンの結果が良好。
 3、体温が37.5度を超えない。

でもって朝の検温は36.5度。出だし好調。でもいつも午後から38度近くまで上がってくるからね、油断できません。昨日も午後37.8度までいってたし・・。

10時の検温。36.8度。ここもクリア。ちなみに採血の結果も良好(ヘモグロビンが10.5まで上昇)との事。

レントゲンの結果も良好。胸水は順調に減っていっているようです。で、15時の検温・・37.6度!。微妙に条件を上回っているじゃないですか!「0.1度くらいサバよむか・・どうせ予測体温計(1分くらいで計れるヤツ)だろ・・」などとズルする事すら頭に浮かびますが、ここでウソついて退院して、結果悪くなってもしょうがないと素直に報告します。

で、夕方。先生から結果報告。
「明日の退院で良いでしょう。あとは外来で。」
ふう・・。ホッとした。それが率直な感想でした。やった!とか嬉しい!っていうよりも「ホッとした」。とにかく今回のは長過ぎました。そしてつらかった・・。

そして25日。ついに退院しました。まだ胸水はたまっているし微熱はあるのですが日常生活に支障なし。会社にも行っていいし、お酒も飲んでいいとの事。よっしゃ!


で、以下。これから気胸で入院する人/気胸で入院している知り合いがいる人へ、2つアドバイスです。

1、「癒着療法はやるな」
癒着はいけませんよ!これで治ったとしても再発率はある程度ありますし、なんと言っても治らなかった場合その後の手術で地獄の苦しみを味わいます。ついでに術後の合併症発生の可能性も大幅アップ。今回私が苦しんだのは「癒着」→「手術」の順番で行ってしまったから。たとえ医者が「癒着やりましょう」って言い出しても「鏡腔鏡手術はだめですか?」ってこちらから提案する事をオススメします。怖いですけどね、結果的にその方が絶対いいですから。

2、「担当医に根掘り葉掘り聞け」
気胸に限らずだいたいの患者さんって、先生のいいなりに検査して、治療して、薬飲んで・・ってしてると思うんです。でもそれでいつになっても進展が無いとイライラすること間違い無し。「今どんな検査、治療を行っていて、結果どうで、いつ頃にはどうなるのか」をきちんと聞いて理解しながら過ごした方がずっと精神衛生上よろしい。特に数値とか具体的に聞くと日に日に良くなって行っているのがわかったりして良いと思いますよ。患者本人が聞きづらいなら家族の方が聞いてあげましょう。
ちなみに今回の私はコレを怠りストレスの塊に・・。

では、もう再発しない事を祈って・・。



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